生と性の話は一般化できるのか、それとも個別化なのか?

世田谷パブリックシアターでワークショップ地域の物語2016「生と性をめぐるささやかな冒険<女性編>」の発表会を観劇。

このプロジェクトの発表会は、そんな呼び方で呼ぶのは失礼なほど完成度は高く作品として成立しています。

出演者以外はすべてプロ。

そして出演者が体験してきた話を物語にして発表する。

半ドキュメンタリーのような生々しさがそこにはある。

この数年、個人の物語が普遍性を持つのかということを徹底的に追及しているような感じもしている。

 

プロセラピストの上田正敏です。

今までグループセラピーの現場でたくさんの事例を見てきた。

今回の地域の物語は、それに近いものを感じる。

何が違うのかといえばカタルシスはあるんだけれど癒しはそこにはない。

いや違うな・・・癒しはあるけれど癒されるかは別の問題なのかもしれない。

 

すごいものを見ちゃったなという感じです。

癒されていないテーマを伝えるって切実さが鬼気迫るものがあります。

 

舞台にいろんな女性が立つだけで圧巻です。

テレビや映画の非現実的な人たちが立っているのではなく、一般の人が立っている。

それだけで多様性という物語が展開されている。

 

体を見るだけで、その背景にある物語が見えてしまうようになったからか。

それともリアルな日常が舞台の上にあるからか。

人が持つ無意識の表現ってすごいものがあるなと。

 

作品の中で「私もきれいな服が着たい」というようなセリフがあった。

僕の周りにはファッションコーディネーターの友人がたくさんいる。

僕自身もコンサルティングを受けたことがある。

では、その方にその情報を伝えたら問題が解決するかといえばそうではないのだろう。

問題の根っこは別なところにある。

 

毒親の話もでてくる。

アダルトチルドレンとかインナーチャイルドだとかの延長で毒親という言葉がでてきた。

親が子供に影響を与えるのは当たり前。

さらに自分たちも子供世代に影響を与える。

その連鎖は人類の歴史だけ続いている。

その最先端の物語が今なのだ。

 

最後の祈りの言葉が印象的だった。

そこにグッとくるものがあった。

最後はここに落ちたのが救いだった。

 

アフタートークも盛り上がったんだけど、女性と男性の対立軸になっちゃうのはもったいないなと。

「女性は抑圧されている。男性なんて死ね。」

みたいな論調になるのはしょうがないものなのか。

 

抑圧している側は、特権を持っているので、問題には気づかない。

抑圧されている側が声をあげて革命を起こしていく。

歴史を振り返ってもそんな感じだ。

この革命の部分を、ハードでいくのかソフトでいくのかの違いがあるのだろう。

どうもトラウマの強さが「戦うか逃げるか」というアドレナリンの反応になってしまうのでしょう。

戦いのエネルギーになってしまうものを違うものに変換できないのかと思ってしまう。

男女という対立軸を作るとわかりやすいからなのかもしれません。

 

このワークショップを担当している演出家である山田珠実さんことたまちゃんがニュートラルであることがアンカーとなっているから安心感がありました。

このわかりやすい対立軸に逃げ込むことに、まったをかける。

男とか女とか一般化する問題ではないのだ。

 

すべての問題は個別化である。

痛みというものは他人にはわからない。

もちろん想像することはできるし、共感もできる。

でも想像しかできないのである。

 

生きること、性のこと。

この体験はすべて個人のものだ。

人の数だけ喜びと悲しみと痛みがある。

だからこそ物語が生まれる。

似た経験をしている人たちはいるからこそ、一般化もしやすい。

生きることと性のことはレインボーなんだ。

すべてがグラデーションともいえるし、みんなが違ってみんな良いだ。

 

こういった作品を作るという行為が、地域への影響、劇場への影響、スタッフへの影響、演出家への影響、参加者への影響、観劇者への影響がどのようにあるのか興味がわく。

 

僕は科学性とか客観性の一般化が好きだったんだけど、最近は個別化に興味があるということがハッキリわかったのが収穫。

そして対立軸を超えた表現に興味があるということも。

 

地域の物語の関係者の皆様、ありがとうございました!

「男性編」の残り2回のワークショップを楽しみます。


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