とあるワークショップの現場で大人が子供に対して、こんな場面がありました。
「君たちは兄弟?似てないね。」
「・・・」
僕は久々にビックリして、何が起きたのかしばらくはわかりませんでした。
僕らは心の繊細な部分を扱う心理セラピストなので、言葉の使い方にとても気を使います。
なぜなら、言葉の力はとても大きいから。
勇気づけにもなれば、暴力にもなることを知っているからです。
さて、僕は、なぜ凍りついてしまったのでしょうか?
理由は3つあります。
第1に、兄弟で比較をされるというトラウマ。
兄弟・姉妹は、友好から競争まで様々な関係性を持っています。
競争が生まれるのは、比較から始まります。
競争は、勝ち負けの思考につながります。
競争が生まれるのは、親の愛を自分が一番受けるために行われます。
そのためには手段は問いません。どんなこともします。
「お前は橋の下から拾ってきた。」という冗談に敏感に反応します。
ここんちの子供でないというのは死活問題になるからです。
心理セラピーの現場で、似ている・似ていない問題で、大人になってから問題になっていたケースも多々あります。
第2に、血のつながった兄弟でないケースがあるからです。
異母兄弟、異父兄弟、連れ子、養子縁組。
そんな家庭も増えてきています。
日本人って文化的に血の継承を重視しています。
人よりも家を重視する伝統があるからです。
家庭によっては、この話題はタブー視される場合も大きいのです。
DNAとしての親、育ての親に対するテーマも心理セラピーの現場では、大きなテーマとしてでてくることがあります。
第3に、これが一番大きなことだと思うのですが、「似てないね」と言った人にとって、似ているか似ていないかはどうでもいい問題だということです。
自分と子供の間に信頼関係を結びたいから声かけをしたのでしょう。
なんでもいいので、話しかけるキッカケを作りたかったのだと思います。
でも、それが、問題を引き起こす可能性を1ミリも感じていないことが問題なのです。
思ったことを思ったまま言葉にするのは、大人として問題があるかもしれません。
感じてしまう、考えてしまう、思ってしまう、ということは、反応なので仕方がありません。
この部分は仕方がないことで、受け入れることが大切になります。
ここで、選択なんです。
言うこともできれば、言わないこともできるのです。
この場合は、言わないということが大人の選択になります。
インプットの部分は選べませんが、アウトプットの部分は選ぶことが可能なのです。
人を殺したくなる位に怒る出来事があったとしても、暴力を振るわないという選択はできるのです。
これは成熟した振る舞いになります。
僕自身がこの出来事で気づいたのは、人への配慮って感性の問題だと思っていたのだけれど、教養の問題なんだとわかったことです。
人には様々な事情があるということです。
コミュニケーションをよくする手法などで、相手のことを想像する力をつけようなんて言いますが、何もないところに想像なんてできません。
自分が自分の人生しか知らないからです。
他人の人生も同じようなものだと思っているからです。
自分も相手も同じと考えてしまうのが人だから。
だから、自分と相手は違うんだという教養が必要なのです。
その違いには、どんなことがあるのかを知ることが大切になります。
昨今の人権問題も教養の問題ということだと僕は思っています。
尊重する言葉がけとは何か?
僕が学んできた心理セラピーでは、相手の言ったことしか言わないという訓練を受けました。
右足を大怪我していたということが目に見えてわかったとしても、左手の棘を抜いて下さいと言われたら、左手の棘を抜くということです。
もし、言うにしても事実だけを言えばいいのです。
自分が感じた感想を言う必要はないのです。
ジャッジをしないというのが原理原則です。
「君たち兄弟なの?」 ← 事実確認
「似ていないね。」← 感想(ジャッジ)
感想を言わずに、事実だけを聞いていけばいいのです。
「君たち兄弟なの?」
「そう。」
「何年生?」
「5年生」「2年生」
「今日はどこに行くか知ってる?」
「知らない」
「今日はね・・・」
事実を話しているだけで、相手のことは少しずつわかってきます。
話してくれたことだけわかればいいのです。
いきなりプライベートのことを聞く大人はいないでしょ。
例えば
「結婚していますか?」
「年収はどのくらいですか?」
「家族はいますか?」
とか事実だとしても初対面でいきなりプライベートなことを聞かないのは大人のマナーです。
どんな質問をするかで、教養レベルがわかってしまうんですよね。
大人へ言わないことは子供へも言わないのがマナーです。
それが相手を尊重すると言うことです。
子供も大人も年上も年下も男性でも女性でも関係ないのです。
1人の人間として尊重することが大切なのです。
ちなみにこの会話が行われた現場では問題は起きていないと思います。そう願っています。
フリースタイル情報
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